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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)160号 判決

上告人

田中喜三郎

代理人

柏倉栄助

柏倉秀夫

佐藤泰正

被上告人

丸相輔

外三名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人柏倉栄助、同柏倉秀夫、同佐藤泰正の上告理由二について。

民法二五八条一項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をなしえない場合を含むものであつて、必ずしも所論のように現実に協議をした上で不調に終つた場合に限られるものではない(大審院昭和一二年(オ)第一九二三号同一三年四月三〇日判決法律新聞四二七六号八頁)。原審の確定した事実によれば、被上告人丸健次において本件共有不動産の分割協議に応ずる意思がなく、そのため共有者全員の間に右分割の協議をなしえなかつたというのであるから、本件共有物分割請求を適法であるとした原審の判断は正当として首肯することができる。また、本件土地および建物の状況、共有者の数およびその持分の割合等原審の確定した事実関係のもとにおいては、本件不動産を現物をもつて適正に分割することは著るしく困難であるというべきである。そして、民法二五八条二項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念上適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべきであるから、原審がいわゆる代金分割の方法による分割を命じたのは正当というべきである。所論の原判示は右と同旨の見解に基づくものと解しえられるのであるから、論旨は理由がない。原判決に所論の違法はなく論旨はすべて採用することができない。

同三について。

不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法一七七条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。そして、共有物分割の訴は、共有者間の権利関係をその全員について画一的に創設する訴であるから、持分譲渡があつても、これをもつて他の共有者に対抗できないときには、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべきものである(大審院大正五年(オ)第八〇三号同年一二月二七日判決民録二二輯二五二四頁参照)。右と同旨の見解の下に、本件不動産の共有物分割を命じた原判決は、正当として首肯することができる原判決に判断遺脱その他所論の違法はなく論旨は採用することができない

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(小川信雄 色川幸太郎 村上朝一 岡原昌男)

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